「ゆれる」(思い切りネタバレです)。
映画館で見たかったが、なんとなく機会を逃して、やっと見た。
役者としては、香川さんの方が興味があるけれど、
やっぱりジョーくんはすごくsexy。カッコつけても様になるし、許せる。
今っぽくカッコいいけど、それが鼻につく寸前で、役者としての旨みも深みもあるだろう、
という期待でそうならないところが、他の若い人にあまりないところだと思う。
全体としてはいい映画だと思った。
内容的には、私的には、終盤がなんとなく腑に落ちないという感じが残った。


人に気を遣い、遠慮して、引き下がる、地方で地道に暮らす兄。
なんでも持っている、自分で運をつかむ力も前向きさもある、都会で暮らす弟。
前半は、そういう位置関係を、一面的にではなく描いていたと思う。
弟は、欲望には正直だが、人の気持ちを感じる繊細さもあり、
自身の自分勝手さのようなものもわかってはいて、そうでない兄に劣等感もある。
兄は、人はいいが、人の下手に出るメリットも自分でわかっていてそれを利用してもいるし、
弟は、兄のそういうしたたかさやずるさの部分も、なんとなくわかってはいる
(兄が、思い切りよさからではなく、人に謝るときに土下座して泣いてしまうようなところを
弟が見ているシーンで、私はそう思っていた)。
そのへんの複雑さを思って見ていたから、ちょっと終盤の持って行き方は軽く思えてしまった。
後半、弟をあまり複雑で思慮深い人というように見ないでいいんじゃないか、と思った。


幼馴染が死んだ事件をきっかけにはじまる、
面会シーンで見せる、兄のその時々の行為の意味は、簡単にはつかめない。
溜めていたものの爆発?拗ね、あきらめ、
自分と弟との間に危うさがあることの確信がほしかったためのような悪態。


終盤については、
弟が、兄が幼馴染を突き落とさないのを見ていたとして(はっきりとは真相を描いてはいない)、
兄の言葉に傷ついたことから、法廷であのように語ることにするのは浅過ぎないか?
また、それを幼い頃のビデオテープで思い直すなんて、ちょっと安直ではないか?
兄との間にあるものを明らかにしたいなら、二人の間での別のやり方でよかったのではないか?
(ああしたところが、あの弟である、という描き方なのだろうか?)

上にも書いたが、二人の関係性、それぞれを見る見方の複雑さからいうと、そんな気がした。
(これって何か根本的に見方が間違っているだろうか?2回〜見たら、印象が変わるだろうか?)


服役を受け入れた兄は、変わりない現実から離れたかったというのもあるかもしれないが、
現実の罪ではなく、弟への複雑な自分の思いや関係に対し、何かを償おうと思ったのかもしれない。
脚本でも香川さんの演技でも、兄が何を考えているのか、今後があるとしたら、兄はどうするか、
どこまで何を見せるのか?そのわからなさが出ていてよかったと思う。
弟への複雑な思いに片はつかないだろうし、
新しい人生を生きる決意はあるかもしれないが、重い現実がなくなるわけではないので、
私は、兄は、バスに乗ると思う。


余談。新井浩文は、この映画ではあまり濃い役ではなかったが、
後半、弟を問い詰め始めるところで一瞬にして目が怖くなったところがすごかった。
ゲルマニウム...」を録画してあるが、なんとなく怖くて見れていない。