昨日、「主人公は僕だった」を見た(かなりネタバレしてます)。よかった。
今日になって思い出してみると、とってもいい感触が自分の中に残っていて、
もう一回観てもいいな、と思っている。


ああいう映画は、単にファンタジックなものとして観て楽しめばいいのか、
ファンタジックだけれども内容、つくりは現実的に考えて感想を持つべきなのか?
自分の中でうまく位置づけられない感じがしたが、考えるのはやめて楽しむことにした。
(作家が、草稿を簡単に人に預けるのかとか、そういうことも考えない。)


歯磨きのブラッシングの数や、バス停までの歩数を毎日正確に数え、
仕事以外では人に会わず、規則や自分の決まりに則して正しく暮らしているウィル。
ウィル・フェレルマギー・ギレンホールの名前で書いてます。)
何故か自分はある作家が書く物語の主人公の人生を生きており、
その物語の結末では自分が死ぬことになることを知る。


主人公は、物語が進む中で、生活が変わり、友だちと夕食を食べたり、平日に映画を見たり、
ずっとやってみたかったギターを楽しみ、自分の欲する人との幸せな時間を過ごすようになる。
そして、物語の中で自分が死ぬことを受け入れるが、そのことをとても悲しむ。
このへんで、自分のことを照らし合わせて考えてしまった。
もしも前と変わらない生活だったら、主人公は同じように悲しんだのだろうか?
(そもそもそういうことを考えるべきところなのかどうかも含めて整理できず。
自分が、もうすぐ死ぬと知らされたとして、そんなに悲しむかどうかうまく想像できない。
まあ、とりあえず、そういうことも置いておいた。)


いくつかの、とても好きなシーン。たぶん、みんな好きなんじゃないかと思う。
ウィルが、マギーの部屋で、やっと始めたばかりのギターを弾きながら歌うシーン。
ウィルの歌う表情に、マギーやギターや歌や、いろいろなものに対する真摯な感じが出ていて、
すごく温かな、いい雰囲気だった。
それと、マギーが、税務調査に来たウィルにいじわるをした後、クッキーを焼いて食べさせるシーン。
どちらのシーンも、あのマギーならではの雰囲気が出ていると思う。
ちょっと扱いにくそうな(いかにも可愛くて性格よさそうー、っていう女の子じゃない感じ)、
でも正直で前向きな、受身でない女の子の感じがすごくよかった。


もう一つ、前後するが、ウィルがマギーに気持ちを伝えるシーン。
"Because I want you "と、繰り返し何度も、
率直に、この言葉を伝えるところが、とってもよかった。
私的に、この言葉は、告白として、 "I love you" よりわかる。


どの俳優さんも役柄にハマっていたと思うが、中でも、作家役のエマ・トンプソンが素晴らしかった。
自信をなくしている作家の焦り方とか、作家らしいちょっと世人と違った立ち振る舞い、
そういう作家固有の癖ってありそう、みたいなところとか、世間が見えてない創作第一の行動とか、
そういうとこ全部、結局はきれいな女優さんがやっている役、というようには全然見えず、
とてもリアルに演じていたと思う。


オチがいまいち、という感想が多いみたいだが、
確かに、私も終盤、あの設定だと、主人公が死ぬか生きるかどちらにしてもつまらないんじゃ...
と心配しながら見ていたが、単純に結果としては、結局はそうなったか、というものだが、
作家エマ・トンプソンが、研究者ダスティン・ホフマンを訪ねて行って話した言葉で、
私的には、ある程度、あの結末に納得した。


美術とか映像演出のセンスが、とっても好きな感じだった。
マギーのやっているベイカリーが、看板や窓などの外装も素敵だったけれど、その中で、
イカーがパンをつくっていて、お客さんがウィンドウの中からパンを選んで、お茶を頼んで...
というのが、とーってもいい雰囲気で、ああいうところでパンとお茶したい〜と思った。
マギーの着ている洋服もすごくかわいかったし、
マギーの部屋の、リネンの柄とか、ランプとか、置いてある小物とか、みんな素敵。
ウィルがギターを探しに行くギターショップとかもかわいくて、印象的。
エンドロールまで、ああ、センスいいな、と思わせるものでした。