・「キング 罪の王」(ネタバレ)
 少し前に「恋愛睡眠〜」でいいなと思い(でもまだ名前を覚えられず)、
 「バベル」で、ほんとに普通に片田舎にいるような庶民の青年の雰囲気が出せていて、
 やっぱりうまい人なんだなと思い、やっと名前を覚えたガエル・ガルシア・ベルナル。
 Wow〜でこれをやってくれたので、録画して楽しみに観ました。

 米の田舎町の神父が、神父になる前に関係を持った娼婦との間に生まれたエルヴィス。
 属していた軍隊を除隊して、父をたずねていくのだが、
 神父としての地位や家族を持つ父に、自分の家族や家には近づくな、と無下にされる。
 神父である父は、妻や息子、娘に立派な信者としての生活を課し、
 多くの町の人が集まる礼拝では、やさしい神父として説教をし、
 そこで息子のロックバンドに演奏させる理解ある父でもあり
 また、趣味である狩猟を息子にも一緒にさせ、殺した生き物の始末を娘にさせている。
 エルヴィスは、その家族の近隣に住んで働きながら、16歳の娘に近づいていく。

 エルヴィスの視点でエルヴィスの思いはまったく語られないので、
 彼が、どういう気持ちの動きで行動を起こしているのかは想像するしかない。
 いつも淡々としていて事を行うが、何を考えているのか、それは、
 どの程度復讐としての意図を持っていて起こしたことなのか、どこまで衝動的なのか...。
 たぶんそれは、生い立ち上からか、自分のことは自分で守るしかないと言う状況にあり、
 そう信じるしかなく生きてきてしまったために取ってしまうその時々の対応でもあり、
 そういう彼でも、何か望みを持って会いに行った父に無下にされたことへの
 計画した復讐の両方でもあるのだと思う。

 自分と血のつながりがあることを知って動揺している妊娠した妹の前で、
 何食わぬ顔で、ファストフード店の紙で王冠を作る、
 また、神父である父のすべてを奪い去った後に、自分自身で父に罪を告げに行くのが
 父が息子として自分を受け入れた後であること、
 それらが、復讐として計画したことだったのかと思うと、恐ろしい。
 しかし、エルヴィスが、動揺したり、地団太を踏んだり悲しんだりしないままに、
 そういう冷血な行動を起こしていくのを観るのは、嫌な気分になるようなものなのだが、
 案外、冷静に観られてしまう。それがいいのかわるいのか、自分ではよくわからない。
 ガエル〜は、そういう役を、まったく不自然さなく演じていて、
 よくわからないのだが、やっぱりうまいのだと思う。
 ウィリアム・ハートは、好きな俳優としてあげるほどではないのだが、
 何故か昔から、好きな作品に出ていることが多いし、何故か惹かれるものがある。
 ズルイ役、病んだ役を演っているものが自分では好きというか、気になる。