「転々」(ネタバレてます。長い。)
 同僚から借りて観た。なんだかいい気持ちで観られた。
 なんというか、流行りのドラマを作った人が監督で、主演がジョーくんで、三浦さんがあの風貌で、
 東京を歩くという淡々とした内容で、たぶん小ネタが満載で....、という感じから、
 かなりある種の層が狙われているようなタイプの映画かな、という感じがして
 もし面白いにしても、そこに引っ張られてしまうのはなんだかなーとか思っていたが、
 (私の場合、邦画に関しては、そういうふうに思ってしまうものが多いです。)
 やっぱりそれでも気にはなるし、そんな考えで面白いものを逃すのもばからしいし、と思い、
 ちょっとうがった気持ちで観始めてしまいましたが、いい感じの作品でした。
  
 主演のジョーくんは、そんな好きではないのだけれど、出ている映画を観るたびに、
 やっぱり認めざるを得ない(エラそう)というか、やっぱりすごい人なのかも、と感じる。
 小ネタとかやってる時のさらっとし具合と、短く現れる真剣な部分のにじみ出具合いが、
 私的には、かなり絶妙だと思える。
 そういう部分で、上に書いた、狙われてる部分みたいなものが引っかかることがなく観られる。  
 
 借金取りの男(三浦さん)が、奥さんを殺したことを自首するため、
 奥さんとの思い出の地を歩きながら霞ヶ関まで行く、それに付き合ってくれたら
 借金を返す100万をくれるという約束で、主人公がその男と二人で東京の町を歩く、という話。
 後半は、その二人を含めた本物ではない家族の暮らしが設定され?(と敢えて。)
 その小さな小さな日常が描かれる。
  
 私は例のドラマを観ていないので、きっと細かい面白いところがわかっていないのだろうけど、
 それでも、歩く道々に描かれる細かいところで、可笑しいところがたくさんあった。
 上に書いた、ジョーくんのいいと思うところを、監督さんのセンスにも感じました。
 なので、やはり、映画自体も、気分よく観られたのだと思う。
 後半出てくるキョンキョンもよかったし、娘役の女の子もかわいかった。
 重ねて描かれる、男の奥さんの同僚3人(松重さんなど)の緩いやりとりも、
 この映画の平和な味わいをいい感じで出していて、必要な部分だったのだと思う。


 後半になって、もしかしたら...?という予測ができてくるのだが、
 それはあくまで予測で終わる。
 どちらも少し世間からははみ出ているような、ジョーくんと三浦さんの男同士のやりとりは、
 人に対して余裕があるというか、相手にしばりや期待のない、ところがいい。
 こういう関係、それをとくに男同士でもてていることに、見ていて気持ちがやさしくなる。
 三浦さんの役の思いや思惑(や現状)は、自分語りとして語られていないので
 想像でしか思えないが、そのへんを思うと、けっこう感動的な話にもなる。
 それをそうでなく描いてあるところが、よかったと思う(ただそうでないのかもしれない)。
 二人の(人の)関係も、本物でない家族の(そして本物の家族の)関係も、
 一緒にいる時間の積み重ねなのだろうか、と後になって少し考えた。
 その時間は短くても長くても。
 
 原作はもっと重い雰囲気のものみたいだし、描きたいポイントは違うのかもしれない。
 (ジョーくんの生い立ちや男のやったことなどを映像にはしていない。原作はどうなのか?)
 そういう原作から何かを感じて、結局こういう映画にしてくれて、私はよかったと思う。
 あまり原作を読んでみようとは思わなく、これはこのまま味わいたいという感じがする。
 最後に、三浦さんが、思ったよりとてもとてもよかった。

転々 プレミアム・エディション [DVD]

転々 プレミアム・エディション [DVD]